文字サイズを変更する
小
中
大
 

群馬県のニュース

《西の鉄路をゆく》上信電鉄120年 観光振興に新たな道 

更新日時:2017年5月31日(水) AM 06:00
 商都・高崎から鏑川沿いを進み群馬県の西毛地域を結ぶ上信電鉄(高崎市鶴見町、木内幸一社長)は、開業から120年を迎えた。営業する私鉄では全国屈指の歴史で、通学や通勤など地域の足として親しまれてきた。ただ、社会環境の変化により輸送人員(乗客数)は減少傾向。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録された富岡製糸場(富岡市)や世界の記憶国内候補の上野三碑(こうずけさんぴ)(高崎市)など、沿線に名所が多い特色を生かし、観光鉄道としての新たな役割も模索している。

◎製糸場、上野三碑、ジオパーク…

 同電鉄の前身、上野鉄道の高崎-福島駅間が開業したのは1897年5月10日。主に繭や生糸の運搬を担った。約4カ月後の9月25日に下仁田駅までの全線が開通。長野県佐久市への延伸計画が浮上したため1921年に「上信電気鉄道」と商号を変えたが、延伸は実現しなかった。

 年間の乗客数は約816万5000人の66年度をピークに右肩下がりが続き、近年は220万人程度で推移。富岡製糸場が世界遺産に登録された2014年度は約236万5000人と9年ぶりに230万人台を回復したものの、15年度約229万人、16年度約221万8000人と減少している。

 路線の維持存続と経営再建を図るため、1999年度からは経営再建計画に基づいて県や沿線市町村の公的支援を受けている。厳しい経営環境の中、富岡製糸場や国名勝「楽山園」(甘楽町)、下仁田ジオパーク(下仁田町)といった沿線の観光地と連携し、観光鉄道化に向けた取り組みを進める。

 三つの石碑がいずれも沿線にある上野三碑が今夏にも世界の記憶に登録されることが期待され、「世界遺産と世界の記憶をつなぐ鉄路」という新たな価値が加わりそうだ。

 高崎駅前には今秋、大型商業施設の高崎オーパ(仮称)が開業を予定する。交流人口の増加が予想され、同電鉄鉄道部は「オーパを含めた駅周辺の再開発によって乗客増につながると期待している」と力を込める。

   ◇    ◇   

 高崎市から甘楽町、富岡市を経て、下仁田町まで全長33.7キロの上信電鉄。21ある駅それぞれの表情を追う。

◎にぎわい生む玄関口…高崎駅

 「まもなく電車が到着します」

 午前7時20分、上信電鉄高崎駅のホームにアナウンスが響くと、大勢の乗客を乗せた下仁田発の普通電車が0番線にすべり込んだ。

 勤務先へ向かう早足のサラリーマン、大きなかばんを背負った高校生-。目指す場所へ向かい、多くの人がホームを歩く。

 1897年5月に開業した同駅。平日の利用客は約3800人(昨年7月時点)で、同社の運行区間で最大の利用客数を誇る。

 「今日もぎゅうぎゅうに混んでたね」

 今春、富岡南中からそろって高崎高に進学した斎藤彩斗さん(15)、島田涼馬さん(15)、武内健悟さん(15)が談笑しながらホームを歩いていた。

 入学から2カ月弱。毎朝6時半すぎに富岡市内の駅から乗車する。「通学に慣れてきたけれど、いつか朝座れたらいいね」とはにかみながら顔を見合わせた。

 同駅は県内外へ向かうJR各線と西毛地域をつなぐハブ的役割を果たすとともに、同地域の観光の「玄関口」としての役割も担う。

 富岡製糸場の世界遺産登録や、「世界の記憶」登録を目指す上野三碑への注目度の高まりとともに、観光客が増加。駅利用者の要望に応えるため、翻訳機能付きのタブレットの設置や、公衆無線LANサービス「Wi-Fi(ワイファイ)」などの整備が進む。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

 

高崎駅0番線から多くの人の1日が始まる=23日午前7時ごろ