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群馬県のニュース

「今も5歳のまま」 功明ちゃん誘拐殺人 未解決30年 

更新日時:2017年9月8日(金) AM 06:00
 87年9月、群馬県で二つの誘拐殺人事件が起きた。犠牲になったのは功明ちゃんと、尾島町(現太田市)の小学2年生、大沢朋子ちゃん=当時(8)。いずれも公訴時効が成立し、真相は闇に消えたままだ。事件発生から間もなく30年。遺族は何を思うのか。捜査や支援方法はどう変わったのか。今を追う。

  ◇   ◇  

 目を閉じ、読経が終わるのを静かに待った。外ではセミが命を燃やしきるかのように鳴いていた。8月13日の昼下がり。群馬県の荻原光則さん(73)は高崎市筑縄町の自宅で法要を営んだ。

▼時効の成立
 菓子や果物が供えられた祭壇の中央にある位牌いはい。長男、功明よしあきちゃんの戒名が刻まれている。30年前、5歳だった時に誘拐され、殺害された。

 犯人は今でも分かっていない。

 1987年9月14日。夕方、自宅近くの神社へ、1人で遊びに行った功明ちゃんがいなくなった。2時間ほど後、男が電話をかけてきた。押し殺すような声だったと記憶している。「子どもを預かっている。2000万円よこさなければ殺す」

 すぐに県警へ通報。急行してきた捜査員と一緒に犯人からの電話を待った。午後8時ごろの電話に功明ちゃんが出て、それが最後のやりとりとなった。

 遺体が見つかったのは16日昼ごろ。自宅から直線で4キロほど離れた入の谷津橋(同市鼻高町)の下の川に、遺棄されていた。

 「30年たった。犯人に思うことは…。いまさら何もありません」。光則さんはつぶやいた。

 事件後、犯人逮捕を期待していたが、捜査は難航。大きな進展がみられないまま2002年に公訴時効が成立した。10年には強盗殺人や殺人など最高刑が死刑に当たる罪の時効が廃止されたが、時効が成立した事件は適用外だった。

▼誕生日にケーキ
 自力で犯人を見つけようとも考えたが、個人の限られた情報の中で探し続けるのは難しかった。子を殺されたという言葉にできないほどの悔しさ、悲しみ。そんな感情はいつからか胸の奥にしまうようになった。

 それでも、8月31日の功明ちゃんの誕生日には欠かさず赤飯とケーキで祝っている。今年もいつものように仏壇に供えた。35歳になるはずだった。「一緒に酒を飲む姿は想像できない。自分の中では5歳のままだから」

 県内の刑法犯認知件数は16年に戦後最少となり、17年もこれを下回るペースで推移する。ただ子どもが犠牲になる凶悪犯罪が無くなることはない。3月には千葉県内で、小3女児が殺害された。

 事件の報道をテレビで目にするたび、功明ちゃんやあの時のことを思い出す。家で本を読んだり、食事の時、楽しそうに話す姿。誘拐後、電話越しで聞いた少し震えた声。やりきれなくなり、電源を消してしまう。

 「自分のような思いを他の人にしてほしくない」。今は町内の防犯委員を務める。夕方に自宅近くを見回って不審者がいないか確かめたり、登下校する子どもを見守る。

 「小さく、将来がある少年少女の命が奪われるなんて本当に異常。どうすれば子どもの安全を守れるか、皆に考えてほしい」。心の中で仏壇の功明ちゃんにも語り掛けた。

 【メモ】県警によると、身代金目的誘拐事件は1946年以降、今年3月末までに全国で307件発生。このうち被害者が殺害されたのは35件で、公訴時効が成立したのは荻原功明ちゃんの事件のみとなっている。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

功明ちゃんの遺影を見つめる荻原光則さん