文字サイズを変更する
小
中
大
 

群馬県のニュース

《関越道バス事故あす5年》心の傷、今も癒えず 遺族  

更新日時:2017年4月28日(金) AM 06:00
 群馬県藤岡市岡之郷の関越道で発生し、乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負った高速ツアーバス事故は29日で5年を迎える。亡くなった乗客の遺族は癒えることのない心の傷を抱えながら、生活している。バス業界は環境の改善を目指す一方、昨年1月には群馬県境に近い長野県軽井沢町でスキーバスが転落し、15人が死亡。重大事故は後を絶たない。5年の節目に際した遺族らの思いや、救急医療体制の変化など社会の動きに迫った。

◎絶えぬ惨事 安全願う
 「あの日から何も変わっていない、ぼろぼろのままだ」。妻の郁子さん=当時(49)=を亡くし、長女(28)も重傷を負った林稔さん(59)=富山県高岡市=は4月下旬、心情を語った。長女は社会復帰に向けて歩む。林さんは「引きずる姿は見せられない」と必死に前を向く。

 しかし、軽井沢町のスキーバス転落事故など惨事は繰り返される。「人間だから失敗はある。運転ミスがあっても大事故にならないよう、車体の強化など安全対策を進めてほしい」と訴える。

 生きていたのに事故のことをまだ言うのか-。当時高校3年だった長男が重傷を負った梁田(やなだ)知代子さん(48)=茨城県ひたちなか市=は心ない声を受けたことがある。助かったために招く苦痛。「世の中に感情を見せられず、つらい日々を過ごしている」と漏らす。

 軽井沢の事故が起きた時はショックを受け、5年前と同様に眠れない、食べられない日々が続いた。それでも、経験を社会に生かそうと一昨年から、犯罪被害者を支援する社会づくりを講演会で訴える。2005年の尼崎JR脱線事故で、負傷した男性が自殺したことに触れ、「公共交通事故の生存者に『君たちは何も悪くない』と伝えたい」と言う。

 群馬県警捜査本部の被害者連絡調整官として、遺族らの心のケアに努めた野沢篤広さん(50)は携帯電話を24時間手放さず、相談を受けながら信頼関係を築いた。

 事故以降、こうした被害者を社会全体で支える仕組みが整いつつある。現在は前橋市に派遣されている野沢さん。これまで全国の警察から依頼され、30回以上講演した。被害者支援に当たる警察官から助言を求められる。野沢さんは「全てが手探りだった。いまだに答えはないが自分の親、兄弟に置き換え、身内だと思うと対応が見えてきた」と振り返る。

 あってはならない事故の教訓を行政や社会、医療機関などがどう生かすか。先の見えない取り組みは続いている。

※詳しくは「上毛新聞」朝刊有料携帯サイト「上毛新聞ニュース」でご覧ください。

防音壁に衝突し、大破した高速ツアーバス=2012年4月29日午前7時20分ごろ

 

バス事故の現場近くに設けられた献花台。29日には遺族らが訪れ、冥福を祈る=27日、藤岡市岡之郷